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Posted: 22 Oct, 2017 @ 4:44am
Updated: 30 Jan, 2022 @ 3:40pm

Early Access Review
謎の巨大施設の底で再起動した機械が、自己改変しつつ上の階層を目指していく、狭義の、そして濃厚なRoguelikeです。システムのフォルム自体はかなりシンプルで、クラスなしスキルなし経験値もなし、下に戻る階段さえありません。しかし内容は極めて多層的かつ精細です。美しく鮮やかなビジュアルで展開するのは、敵味方そして中立と個性的で賑やかな機械達の世界に、刻々変化する状況と自分。スタートの敷居は低く、一手ごとに増す戦略性。これは、面白いです。既に4年の開発を経て作品として完成しており、さらにコンテンツを拡充するための早期アクセス扱いとのこと。

開始時、プレイヤーには動力源1・移動機構2・ユーティリティ2・武器2の装備スロットと所持品枠4のみがあり、ここに施設で入手したり敵から奪ったパーツを繋げていきます。パーツには排熱や射撃の反動など考慮すべきパラメータも数多いのですが、ややこしさが前面に出てこないようになっており、とりあえずは動けばいいという駄目なコードみたいな感覚で遊べます。この「パーツを組み合わせる」というゲームデザイン自体は珍しくありませんが、実際には各要素が有機的に結びつき、かなり普通とは異なる奥の深いシステムになっています。
また細かなデータもただそれっぽくシミュレートしてあるだけなのではなく、プレイに大きく影響を与えており、たとえばRoguelikeお約束の一本道や角での待ち伏せも、そう単純ではなかったり。リソースは弾薬等に用いる”マター”と電力でエレガントにまとめられており、餓死に直接対応する概念はありません。

派手で多彩な装備を駆使する戦闘は楽しく、いい感じに武装を構成できると調子に乗ってぶちかましたくなりますが、しかしハクスラとは言い難いです。もちろん火力重視ビルドも自由にできますが、戦闘は常にリスクがつきまとい、パーツ類も結構な勢いで損耗するため(ある程度の対処も幾つか存在するものの)なかなか直線的、恒常的なパワーアップは見込めません。本作にあるのは戦闘も一手段の生存戦であり、様々な形でのハッキング、手元の物資と情報による次の最善手の模索、"ステルスゲーム"というよりは"統合的な立ち回り"です。センサー反応を睨みつつ危険地帯を一歩ずつ切り抜ける。ボコスカ撃たれながら部屋に逃げ込み、航空型に切り替えて脱出(あるいは、武装を展開し待ち受ける?)。絶体絶命というところで目の前に平和にお仕事している建設ロボット…よし。

プレイヤーの意思に応じて世界を探っていく形のアドベンチャーゲームでもあり、現在プレイ時間200hを超えてまだまだ挑戦的で、かつ多くの未知や試行錯誤を楽しんでいます。開発者によると、beta8段階で全てを見たと思われるプレイヤーはほんの一握りしかいないとか。遊ぶほどに洗練されたゲーム性と立ち回りの面白さを感じられる本作ですが、がちがちにシリアス一辺倒でもなく意外と笑わせたり驚かせてくれたりも。

またUIが、Roguelikeとしてではなくゲーム全体において恐ろしく優れています。ニュアンスはBrogueに近く、あれをさらに突き詰めたものと言えば伝わるでしょうか。サイドボタンにESC等を割り当ててるとはいえ、主要操作はほぼマウスだけで、ここまで快適にRoguelikeができる日が来るとは思いませんでした(ハッキングの一部要素等、必須ではないもののキーボード入力をする機会があるため、マウスオンリーを企図してデザインされているわけではないようですが)。パラメータやアラート類もグラフィカルに、あるいは整理された値で、非常にスマートに表示してくれます。

映像に関してはストアのトレイラー以上の表現力を私は持ち合わせませんが、こういうのが好きな人間にはたまらないものがありますね(正確にはトレイラーは2年前のもので、今のバージョンではさらに磨きがかかっています)。武器一つ一つ、サブシステム類すらセンスの良いエフェクトを伴って、しかしプレイングの小気味良さは邪魔しません。

レビューでは芸術品のような、といった評価を見かけますが、まさにそんな感じの作品です。べた褒めも何ですし無理矢理ひとつ気になった部分を挙げると、世界観等のテキストも相当充実しているのですが、一覧性の高いUIデザインの関係でフォントが小さめにならざるを得ず、慣れるまで可読性にやや難ありかもしれません。ただ会話や収集したドキュメントをtxtやhtmlで出力も可能と、やはり手抜かりはない感じがあります。(またストアページのリンクから各解像度・フォントでどのように画面が見えるか確認できます)
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2 Comments
Via 30 Jan, 2018 @ 7:58am 
ありがとうございます。ですがこのゲームの魅力、特徴はなかなか書ききれず忸怩たるところもあります。Suizinさんのレビューの方がしっかりとされているような…。
Tama 29 Jan, 2018 @ 9:05pm 
良いレビューですね!