本作はアメリカのインディーゲームスタジオ「OMOCAT」が贈るサイコロジカルホラーRPG。
アーティストで原案者でもあるOMOCAT氏を中心とした本作は、RPGツクールを利用し開発され、OMOCAT氏自身もインタビューで語ったように「MOTHER」シリーズや「ゆめにっき」、その他多くの日本の作品の影響を受けているとのこと。その為、これらの作品に触れたことのある人には親しみやすく、どこかノスタルジックな印象を受けるものとなっている。
半面、人によっては悪い意味で既視感を覚えやすいゲームデザインとなっており、好き嫌いが分かれる要素にもなっている。私自身も過去にプレイした作品等を想起してしまい、本作の内容がSteamやメディアで話題にならなければ、購入はしていなかっただろう。

以上のような点からも、本作は見た目と内容の乖離が激しく、それがプラスにもマイナスにも働く要素となっている。
そしてもし、あなたが「OMORI」のストアページ等を見てネガティブな印象を抱いてしまったのなら、少し待ってほしい。
順を追って説明していこう。

・シナリオ
本作を本作たらしめるものである。
そして本作をおススメする人間が九分九厘、口にするだろう言葉が「シナリオが良い！」。
だが、ここで本作のシナリオの内容に触れることは却って没入感を削ぎ、誤った先入観を持たせてしまう恐れさえある。結果的にそれはプレイの妨げになるだろう。
よって、ここではこのレビューを信じてもらうほかない。「Do you trust me?（僕を信じろ）」

・ローカライズ
概要でも述べた通り、本作はデザインが日本製の作品によく似ており親しみを感じやすい。そしてそれに拍車を掛け、本作最大の売りであるシナリオをしっかりと補強してくれているのが、ローカライズのクオリティの高さだ。
正直私自身、これが一番良かった点なのではないかとさえ思っている。
というのも、本作は音声的なものは一切なく、プレイ中はテキストを読むことが専らだからである。必然的にローカライズの占めるウェイトは大きくなるわけで、これの出来次第で日本語ユーザーのゲーム体験は大きく左右される。
その点からも本作のローカライズが、日本製のゲームとなんら遜色ない出来となっていることを高く評価している。

・RPG要素
本作はRPGツクールをベースに開発されており、ジャンルもRPGとなっているだけあって探索・戦闘の要素がある。
この手の昔ながらのゲームデザインはとっつきやすい反面、目新しい要素が無いと間延びしがちで、飽きてしまいやすい。
往年のユーザーや、コマンド式ターン制バトル愛好家等にみられる理解や愛、若しくは耐性がないとこの点はネックになるかもしれない。

・UI
これもまた前述の通りRPGツクールをベースにしているため、ある程度は仕方のないことなのかもしれないが、使い勝手があまりよくない。昨今のRPGに慣れ親しんだ者にとって、本作のUIはあまり良い印象を与えないだろう。
特に装備・スキル・ステータス等は、もう少し工夫があっても良かったのではないだろうか。

・サウンドトラック
良かった点では取り上げなかったが、作中で使用される音楽は印象深く、耳に残るものが多い。
気に入ったものがあったり、お布施がしたい等の理由があれば買ってみるのもいいだろう。

「OMORI」って作品が評判が良くて話題になっているらしい。メディアなどでも取り上げられていて、何度か名前を見かけたことがある。
そういった経緯から私はストアページを訪れた。しかし、私の本作への印象はあまり良くなかった……というより、悪かった。

それというのも、やはり前面に出てくる「MOTHER」やフリーゲーム、RPGツクールらしさの所為である。
別にこれらのゲームが嫌いなわけではない。むしろ幼少期はこの手のジャンルを好んでよくプレイしたものだ。
しかしその反動か、この手のゲームには食傷気味なのである。目新しいものは何もなく、子どもの時に楽しかった要素も、今では煩わしいものでしかない……ただ、話題作だしセール中だから買って積んでおくか……本作「OMORI」に抱いた第一印象はそういったものであった。

そんな印象を持ったまま、機械的に積みゲーである本作を崩し始め、それをプレイし終えた時の衝撃たるや……最近は本やドラマ・映画でもここまで感情を揺さぶられることはなかったのに……ゲームでこれほどキツい一発をお見舞いされるとは！
そして、その衝撃の余波は今こうしてレビューを書く原動力にさえなっている。
疲れきった心に、代わり映えしない毎日に、一服の清涼剤が欲しいそこのあなた！
「OMORI」をプレイしてみてはどうだろうか？