終わりの瞬間、それは永遠と一瞬の狭間に意識が凍りつく逆説的な状態だ。過去は霞み、未来は消え、重く満たされた現在だけが残る。真実と嘘、喜びと悲しみ、成功と挫折が一つの波となり、魂を包み込み、幻想を洗い流す。その瞬間、人は自分自身と虚無に裸のまま立ち、恐怖は必然の理解に溶けて消える。

光は遠い灯台のようにかすみ、空虚へと続く境界を示す。記憶は薄れ、ただ水面に揺れる微かな影のように映像を残す。道の終わりに何があるのか？もしかすると、終わりではなく、時空を超えた新たな現実への一歩に過ぎないのかもしれない。個は無限の中に溶け、海の一滴のように存在を失うのだろうか。

だが、別の視点もある。それは、死に瀕した者の生への執着だ。すべての瞬間が黄金に輝き、息をすることすら贅沢に感じる。存在と無の境界は剃刀の刃よりも鋭く、言葉一つ一つが最後のものとなる。そんな時、意識は風のささやき、光の揺らめき、冷気の触感といった些細なものにしがみつく。この感覚を理解できるのは一度きり、身体が重くなり、思考が羽のように軽くなるその時だけだ。

この世界における死とは何か？それは幻想の超越、偽りの境界の放棄かもしれない。あるいは死とは、言葉では表現できないものとの出会い、解放の始まりなのかもしれない。理性の限界を超えた先にこそ、新たな存在があり、痛みも恐怖も後悔も消え去り、ただ静かな光がすべてを包み込む場所があるのだろう。